Facebook - 内海 聡
2020年7月30日
https://m.facebook.com/story.php?story_fbid=3216751991741865&id=100002212881426
(以下一部引用)

イヌイットと環境問題
 
1970年代から、ホッキョクグマなどの海獣の体内から高濃度の水銀やPCB(ポリ塩化ビフェニル類)が検出されることが知られていた。
また1980年代半ばに、バフィン島中東部にあるブロートン・アイランド村で海獣とイヌイットの食物に関する調査が実施され、それらの中からPCBが検出された。
水銀は自然界にも存在するが、PCBは人工的に製造された化学物質であり、極北地域には本来存在するはずがない物質である。
したがって、その源がどこにあるのかが大きな疑問となった。
 
1980年代にカナダ人の研究者によって、カナダ南部に住む白人の母乳の汚染度とカナダ極北地域に住むイヌイットの母乳の汚染度を比較する調査が実施された。
当時、イヌイットは地元で捕れる肉や魚を主食としていたが、都市に住む人は化学物質を含んだ加工食品を食べているので、イヌイットの母乳は、都市生活者の母乳よりも有害物質を含んでいないだろうと考えられていた。
しかし、調査結果は、驚くべきものだった。
イヌイットの母乳から、南部の都市に住む女性の三倍から五倍も高濃度なPCBが検出されたのである。
こうした調査がきっかけとなって、極北地域の環境汚染の問題が、政官界や学界、マスコミの注目を浴びるようになったのである。
 
(イヌイット 岸上伸啓:著より)
 
これは肉や魚の常食が問題と考えていいのだろうか?もしかしたら別の要因があるのかもしれない。
ある博士はこのような濃度上昇はやはり食物のせいであろうと述べている。
それはわかるのだが、ではなぜ極北の魚や肉はそれほど毒されているのだろう。
日本も高いがイヌイットも高いのであれば、すでに世界中の魚、世界中の海獣が汚染されていると考えたほうが早いのだろうか。
ちなみに漁民とイヌイットを比べてもイヌイットのほうがダイオキシンが多いらしいが、この主たる理由は海獣(クジラの一部)を食べるからだと推測されている。
ちなみにほかの原住民族でカリブーを食べる人は、ダイオキシン濃度が低かったということらしい。
 
ダイオキシンの大部分は直接大気に排出されているという。
また100年以上前の土壌や人体を調べる限り、ダイオキシンは検出限界以下という。
一般ごみの焼却とディーゼル社の排出が多いようだが、結局最後は海で濃縮されるということだろうか?
仮にそうだとすればこのような脂溶毒の場合、ほぼすべてが海中に流れて最後は濃縮される結果となる。
ほかの毒も同様に海産物から取り入れているかもしれないことになる。
この問題は結局大型魚(もしくはクジラなど)の危険性を示していると同時に、海洋汚染の隠れた深刻さを物語っている。
科学的にだけとらえればやはりこの世界に食べるものはないのかもしれない。
 
生物濃縮といえばレイチェル・カーソンの著書が有名だが、もはや『沈黙の春』のレベルは通り越しているのだろう。
wikiに掲載されている話では、1949年、カリフォルニア州クリア湖でユスリカの駆除のためにDDD(ジクロロ-ジフェニル-ジクロロエタン)が散布された際、数年後にクビナガカイツブリが多く死亡した。
のちの調査により、湖水と比較して80000万倍の濃度のDDDが水鳥に蓄積されていることが明らかになった。
 
海洋生態系の最高次生物であるクジラ類への生物濃縮はとくに深刻な場合がある。
北太平洋西部での調査ではスジイルカに残留するDDTおよびPCBの濃度が海水と比べてそれぞれ3700万倍・1300万倍も濃縮されていることが示された。
有明海のスナメリやアメリカ・地中海のハンドウイルカからも同様の化学物質の蓄積が確認されている。
クジラ類はアザラシと比べて出産や授乳によって母から子へ移行する化学物質の割合が高いことが指摘されており、クジラ類の寿命も長いことから、生物濃縮によるクジラ類の汚染は簡単には収束しないとされている。
 
世界には川や海にシアン化物を流す「毒物漁法」などというのも存在するようで、現在日本では禁止されているが政府の許可をとった場合は認められている。
海洋の二酸化窒素(NO2)汚染に着目した研究もあるようだ。
二酸化窒素は、微小粒子による汚染を地表にもたらし呼吸器疾患等の原因になるそうだが、この主たる要因が船舶であるそうだ。
海洋では交通量が最も多く混雑した航路の周囲に二酸化窒素濃度が高いことがわかっている。
もう一つが沿岸部であり、欧州や北米、中国や日本の沿岸はひどいことになっている。
地球の環境汚染はニンゲンが思い測るレベルを超えている。